ランチタイムの王子様!
(やだ……)
幻のような笑顔を見たせいで私の心臓はバクバクと大きな音を立て、頬が紅潮していく。一度意識しだすと、動悸が治まらなくて困る。
こんなの反則だ!!
だって、おかしい!!
私、王子さんのことが苦手だったはずなのに……。
「お、王子さんはもっと笑ったほうが良いと思います!!」
苦し紛れにそう言うと、王子さんの表情は私のご希望通りの仏頂面に戻った。
「私だって笑う時ぐらいありますよ」
失礼なとブツブツ呟きながら、王子さんはコンソメスープをすすった。
「だっていつも硬い表情だから……」
「四六時中ヘラヘラ笑っていろと?」
「それはちょっと……」
へらへら笑っている王子さんを想像するだけで、不気味だから勘弁してほしい。
まったく、ああ言えばこう言う。口の減らない人である。
でも、仕事中にもあの笑顔を見せてくれたら心臓に悪いのでこれで良しとしよう。
美味しいご飯の前では、どんな諍いだろうと一時休戦だ。
今は目の前のご馳走に意識を集中させねばならぬ。