ランチタイムの王子様!
とっても美味しそうなおかずさんは、機械的に口元に運ばれお世辞を言われることなく咀嚼される。
もっと美味しそうに食べて!!と、おかずが泣いているのが今にも聞こえてきそうだ。
おかず達の運命を心底嘆いていると、食事を終えた王子さんが空になった弁当箱をしまいながら言った。
「人の顔を見て、ため息をつかないでくれますか?」
「すいません……」
同情のあまり心の声がうっかり漏れていたようだ。ついつい彼女側に感情移入してしまった。
「それで、何のご用件ですか?」
王子さんは眼鏡のフレームを上に押し上げながら、改めて尋ねてきた。
若王子という珍しい苗字故に“王子”という愛称で呼ばれているのは、本人曰く不愉快らしく、やや眉を顰めている。
確かにちょっと滑稽な愛称だとも思う。
王子さんが跪いて姫に求婚する姿がどうやっても想像できない。
どちらかと言えば玉座にふんぞり返って、声高に命令している方が似合う。
王子というより、王様。それも、絶対君主だ。