ランチタイムの王子様!
秘密のお料理レッスンの内容は毎週様々だった。
ハンバーグを作った翌週は包丁の使い方を教えてもらい。
更に次の週には野菜の切り方と下準備の仕方を習い。
基本的なことが出来るようになると少し実践的になって、出汁をとってお味噌汁を作った。
教えてもらうのは基礎ばかりでこんなスローペースで大丈夫かなと考えていると、よほど不服そうな顔つきをしていたのか、王子さんが余裕綽綽でこう言った。
「焦って見栄えの良いものを作ろうとしても失敗してしまいますよ。一見地味にも思えますが、基本をキチンと押さえることが結局は近道なんですよ」
出来の悪い生徒に言い聞かす先生のような語り口にうーっと声にならない不満をもらすが、数日後には彼の言うことが事実だと認めざるを得なくなる。
王子さんに包丁の使い方を教えてもらってから、指を切る回数は格段に減ったし、野菜を均等な大きさに切りそろえる術を教わってからは焼きすぎ、生煮えでうぐっと口元を押さえるようなことはなくなった。
教え上手な王子さんのもと、私の料理の腕は少しずつ、しかし確実に上がっていっている。