ランチタイムの王子様!

そうなのだ。

我が愛しの古アパートには母から譲りうけた、フライパン、菜箸、包丁、まな板ぐらいしかまともな調理器具がない。

いざ、なにかを作ろうと思い立っても、なんでも揃っている王子さんの家との違いに戸惑ってしまい諦めるしかない。そうそう、件の計量スプーンだって家にはない。

次のルージュランチこそは失敗したくない。

だから、自分の家でも練習できるように道具を買って、まともに作れるまで練習したいのだ。

それが、料理を教えてくれた王子さんに対する礼儀でもある。

「自主練ですか?」

王子さんはソファにゆったりと投げ出していた脚を組み換え、訝しげに眉を顰めた。買っても使わないのではないかという疑いの眼差しをひしひしと感じた。

「形から入るタイプなんです!!私!!」

買っちゃったら逃げ場もないしね、うん。

そうやって、自分を追い込まないと一人前になるまで何年もかかりそう。

きっと、王子さんに認めてもらえない限りこのお料理レッスンはいつまでも続くに違いない。

アドバイスを聞き漏らすまいとひたすら静かに待っていると、なんと王子さんは予想外の提案をしてきた。

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