ランチタイムの王子様!
ランチタイムと恋の始まり
料理道具を買うのにどこまで行くのだろう。
車は調理器具を買うにはもってこいのホームセンターやデパートを通り過ぎ、幹線道路をひた走っている。
そろそろ目的地はどこなのかと聞こうかと思っていると、車が緩やかに減速し、路地裏のコインパーキングに停車した。
「着きました」
着きましたと言われても困る。シートベルトを外し車外に出て、パーキングエリアの周りを見渡しても、ここがどこだかさっぱり分からない。
「こちらです」
王子さんは迷いのない足取りで路地裏からメインストリートらしき通りの方へ歩いて行く。
ぐずぐずしていたら置いていかれる!!
慌てて先を行く王子さんの背中を追いかけると、遠目にしか見えなかった大通りの光景がだんだんと近づいてきて、目をパチクリとさせる。
「問屋街?」
「当たりです」
王子さんは楽しくてしかたないという気持ちが溢れんばかりに、声を弾ませていた。
(珍しい……!!)
あの王子さんがはしゃいでいる!!
鼻歌でも歌いだしかねないくらい上機嫌な王子さんなんて初めてだ。ちょっと怖いぞ。
ああ、でも。はしゃいでしまう気持ちは分かるかもしれない。
何に使うのか分からない大鍋。季節感のない新品のラーメンののぼり。どう考えても売れなさそうな屋台セット。
調理器具専門のお店が多く立ち並ぶ問屋街は、料理オタクといって差し支えない王子さんだけではなく、ミーハーな私をも魅了した。
「行きますよ」
「あ、待ってくださいよ!!」