ランチタイムの王子様!
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問屋街で必要な調理器具をあらかた買い込むと、昼間とおなじ経路を辿って家路につく。
荷物が多いからと王子さんは気を遣って、私をアパートの前まで送ってくれた。
「すいません。送ってもらっちゃって」
恐縮してぺこりと頭を下げる。
折角の休日に付き合ってもらった上に、大層な包丁まで買って頂いた。
“雲雀”とひらがなではなく、あえて漢字で刻まれた秀麗な文字を見て、素直に頑張ろうと思える。
「いいえ。こちらこそこんな時間まで連れまわして申し訳ありませんでした」
お礼のつもりで案内した、お気に入りの本格ナポリピッツア専門店ではすっかり話し込んでしまった。
焼きたての生地の香ばしさととろけるチーズ、甘酸っぱいトマトソースとの相性を力説しているうちにすっかり夜が更けていた。
料理好きの王子さんといえども、ピザ用の焼き釜は買ったりしませんよね?
味を分析する王子さんを見て、ちょこっと寒気がしたのは気のせいということにしておく。