ランチタイムの王子様!

「あ、もうなくなりそうじゃん!!望月さんの分も取って来るね」

麻帆さんがそう言ってカルパッチョに群がる人達の波を掻き分けるようにしていくのを見送ると、王子さんがこそっと耳打ちをしてきた。

「結局、ハンバーグにしたんですか?他にも色々と教えて差し上げたのに……」

確かに他にもいくつか肉料理を教わっていたわけだけど、ハンバーグを選んだのにはそれなりに理由があった。

「私、バカだから……。昔の……何もできなかった自分とどうしても“さよなら”したかったんです」

……実を言うと元カレに作って酷評された料理もハンバーグだったのだ。

最初のルージュランチの時に持ってこられなかったハンバーグ、元カレにまずいと言われて捨てられてしまったハンバーグ。

これでようやくどちらにも墓標を立ててあげられたのだと思う。

まるで、憑き物がとれたかのように肩が軽い。

どんな料理だろうと任せなさいっと胸を叩けそうなくらい、気が大きくなっている。

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