ランチタイムの王子様!
ランチタイムに旬のご馳走

鬼王子による料理レッスンを受け始めてから早3ヵ月。

門下生として接する内に分かったのは、若王子瑛介という男がなかなか難儀な人物であるということだった。

34歳で独身。性格は至って真面目。顔立ちは美形といわれる部類だろうが、切れ長な目を今日もやや不機嫌気味に細めているのが欠点といえば欠点である。

やたらとキッチンが立派なマンションに一人住まい。

彼女は……いないはず。

だって王子さん、折角の休日だというのに毎週私のお料理レッスンの付き合ってくれるし。

真面目な性格ゆえに、彼女がいたとしたら他の女性を部屋に上がらせるようなことはしないと思う。

というか、お揃いの歯ブラシなんか洗面所で見つけた日には、目も当てられないほど落ち込んでしまうだろう。

そう言えば、王子さんが好きになる女性ってどんな人なんだろう。

可愛いハムスター系?それとも大人かっこいい女豹系?

私はどちらにも当てはまらない。あえて例えるとするならばのほほんとしたカワウソ系?

うーん。わからん。

こうしてお家にお邪魔させてもらっているのだって例外中の例外だ。

彼のような精神的にも経済的にも自立した男性が、自分のお城……あの凝りに凝ったキッチンに他人を置くなんて、本当だったら嫌でたまらないんだろうな。

……私のトラウマによっぽど同情したのだろうか。

まあおかげで、私の料理の腕は以前よりましなものになった。

少なくとも、食べたらお腹を壊すようなものはない……はず。

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