婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
婚約者
あれから一カ月。
なつはずっと苦しんでいた。
あれほど傷つけられたというのにどうしても圭司を憎めない。そればかりか圭司への想いが募っていくのだ。なつはそれほど深く圭司を愛してしまっていた。
そんな中、代議士をしている父、賢三から縁談の話を持ち掛けられた。
「相手は田島なんだが、なつにぜひ受けてもらいたい」
「え!?」
賢三の言葉になつは耳を疑った。
田島というのは賢三の第二秘書だ。
どこか笑顔が嘘っぽく、何を考えているか分からない男。
なつにはそんな印象が強く、昔から彼のことは苦手だった。
よりにもよって何故そんな男と。
なつは信じられない思いで賢三を見た。
「実はな、彼を私の後継者として次の選挙に出馬させたいと思ってるんだ。後援会や党の幹部達もそのつもりで動いてくれている。来月婚約披露パーティーを開くから、なつもそのつもりでいてくれ」
「ちょ、ちょっと待って! どうしてそんな勝手なことするの。私は自分の決めた人と」
「あの男のことを言っているのか? あいつはプロポーズだけして逃げたんだろ? そんな男をいつまでも想ってたって仕方ないじゃないか。それに、もともと田島はなつの婚約者にと考えていたんだ。なつがあの男とつき合う前からな。田島は信頼できる男だよ。決して裏切ったりはしないだろう。彼ならきっと幸せにしてくれるはずだ」
なつは押し黙った。
圭司のことに触れられて胸が苦しくなってしまったのだ。
「とにかく、そういうことだから。色々と準備をしておいてくれ」
賢三はなつの肩をポンと叩き、仕事へと出かけて行った。