婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~

「あら? ため息なんてついてどうしたの?」

母の節子がやって来て心配そうになつを見た。

「だって、お父様が…」

「婚約のことね」

「私に黙って話しを進めるなんて酷い…」

「そうね。お父さん、田島さんに随分肩入れしてるから、どうしてもなつと結婚させたいのね。でも、田島さんなら、なつを幸せにしてくれると思うわ」

なつは母の言葉を聞いてため息をついた。

「お母様までそんなこと言うのね」

「なつ。よく聞いて。森口家は代々続いてきた政治家の家系。あなたはそのひとり娘なの。可哀想だけど、できることなら、あなたにはお父様のあとを継いでくれる人と結婚してもらいたい。田島さんも快く承諾してくれてるし、世間知らずななつには、田島さんのように真面目でしっかりとした人がいいと思うのよ。暴走族をやっていた人になんて、とても任せられないわ」

「そうだね。もうどうでもいいよ…」

なつは投げやりにそう呟いた。

どの道、圭司との結婚は叶わないのだ。
それならば誰と結婚したって同じこと。

もう、父や母に反抗する気力さえ失ってしまった。


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