婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
勝負の時
その夜、なつはアクアの前に立っていた。
店の前で声をかけているホストが、今日は拓哉ではないことにホッとする。
「いらっしゃいませ。森口様。本日のご指名は拓哉で宜しいでしょうか?」
出迎えた支配人は拓哉の名前を出したが、なつは迷わず響を指名した。
「……かしこまりました。どうぞ、こちらへ」
支配人はなつをいつもの席へと案内した後、圭司がすわる奥のテーブルへと向かった。
圭司はなつをチラリと見ると、まるで見せつけるかのように、となりにすわる女性客の肩を抱き寄せた。
女性客は嬉しそうに、圭司の胸に甘え出した。
なつは唇を噛み締めた。
「あ~あ。響さんも人が悪いよね」
なつはハッとして顔を上げる。
いつの間にかなつのとにりには、見覚えのあるホストがすわっていた。彼はなつが初めてアクアに来た日にヘルプについたホストだった。
「お久しぶりです、なつさん。レンです。僕のこと覚えてますか?」
「は………はい。どうも」
なつは気のない返事を返した。
「ハハ。僕のことなんて全然興味ないって感じですね? でも、そんなに響さんしか見えてないと、逆に振り向かせてみたくなるなあ。ねえ、口説いてもいい?」
レンはなつの耳もとで呟いた。
「い、いえ。困ります」
なつはブルブルと首を振る。
「まあ、そう言わずにさ。仲良くしようよ」
レンはそう言うと、なつのを肩を抱いて引き寄せた。