婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
圭司との甘い夜。
再び告げられた別れ。
まだなつの頭は少しも整理しきれていなかった。
お互いに気持ちがあるのにどうして別れなければならないのか?
なつは少しも納得できていなかった。
駆け落ちしてでも圭司と一緒になりたい。
そんな思いを胸に廊下を歩いていた時だった。
「「キャ!」」
角を曲がった瞬間、看護士と出会い頭にぶつかってしまった。
「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」
看護師は慌ててなつに声をかける。
「だ、大丈夫です。私もボンヤリしていたので」
なつは看護士がバラまいてしまった書類を拾った。
「ありがとうございます」
看護師はそう口にした直後、なつの顔をジッと見つめた。
「あの……失礼ですけど。あなたって……この前、ホテルで圭司を引き止めた人じゃないですか?」
不意に圭司の名前を出されてなつはドキッとした。
「え?」
確かに看護師の顔をよく見れば、あの時ホテルで圭司と一緒にいた女性だった。
圭司が【ゆかり】と呼んでいた人だ。
「あっ……あの時の」
「はい」
ゆかりは微かに微笑みながら頷いた。
「私、実は気になっていたんですよね。圭司は他人の振りをして誤魔化してましたけど、なんか少し不自然だったので」
その口振は、ゆかりが圭司と特別な関係であると伺わせるものだった。
なつは動揺した。
「あ……私は圭司の大学の友人で…森口なつと言います。しばらく会っていなかったので忘れられてしまったみたいですね」
なつはぎこちなく笑った。