婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~

圭司との甘い夜。
再び告げられた別れ。
まだなつの頭は少しも整理しきれていなかった。

お互いに気持ちがあるのにどうして別れなければならないのか?
なつは少しも納得できていなかった。

駆け落ちしてでも圭司と一緒になりたい。

そんな思いを胸に廊下を歩いていた時だった。

「「キャ!」」

角を曲がった瞬間、看護士と出会い頭にぶつかってしまった。

「ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」

看護師は慌ててなつに声をかける。

「だ、大丈夫です。私もボンヤリしていたので」

なつは看護士がバラまいてしまった書類を拾った。

「ありがとうございます」

看護師はそう口にした直後、なつの顔をジッと見つめた。

「あの……失礼ですけど。あなたって……この前、ホテルで圭司を引き止めた人じゃないですか?」

不意に圭司の名前を出されてなつはドキッとした。

「え?」

確かに看護師の顔をよく見れば、あの時ホテルで圭司と一緒にいた女性だった。
圭司が【ゆかり】と呼んでいた人だ。

「あっ……あの時の」

「はい」

ゆかりは微かに微笑みながら頷いた。

「私、実は気になっていたんですよね。圭司は他人の振りをして誤魔化してましたけど、なんか少し不自然だったので」

その口振は、ゆかりが圭司と特別な関係であると伺わせるものだった。

なつは動揺した。

「あ……私は圭司の大学の友人で…森口なつと言います。しばらく会っていなかったので忘れられてしまったみたいですね」

なつはぎこちなく笑った。

< 28 / 87 >

この作品をシェア

pagetop