婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~

なつは咄嗟に友人と名乗っていた。
何となく、そう言わざるを得ない状態だった。

「なんだ、やっぱりただのお友達だったんですね。だったらちゃんと紹介してくれればよかったのに。私に誤解されるのが嫌だったのかしら」

彼女は独り言のように呟いてから、ハッと私を見た。

「あっ、ごめんなさい。私はここで看護士をしている海藤由香理といいます。あの日は、ちょうど私の誕生日で、圭司にお祝いしてもらっていたんです。ほらこれ、圭司からの初めてのプレゼントなんですよ」

ゆかりは照れながら、胸元に光るハート型のネックレスに手をかけた。

「そうでしたか」

なつは無理やり笑顔を作った。
すっかりマウントを取られてしまい、どうにもいたたまれない気持ちになった。

「なつさんは、どなたかのお見舞いですか?」

「あ……父が過労で入院することになったので。幸いたいしたことはないみたいですが…」

小さな声で答えるなつ。
早くこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。

「そうでしたか。早くお元気になるといいですね」

そんななつに由香理は笑顔で返したあと、思い出したようにこう口にした。

「そうそう。圭司のお母さんもここに入院しているんですよ。ご存知でした?」

「えっ! おば様が!?」

なつは思わず声をあげた。
前回圭司のマンションに行った時になつも違和感は感じていた。母親と暮らしている気配がなかったからだ。

やはり体調を崩されていたの?
持病の喘息が酷くなってしまったのだろうか。

なつは、当時から入退院を繰り返していた圭司の母親のことが心配になった。

「あっ、ごめんなさい。私そろそろ行かないと! それじゃ、なつさん。今度ゆつくり圭司の大学時代の話でも聞かせて下さいね。では」

ゆかりは小走りで去っていった。
残されたなつは大きくため息をつく。

恐らくゆかりと圭司は付き合っているのだろう。
圭司だって、ゆかりを信頼しているからこそ、自分の母親をここに入院させているに違いない。

だったら初めからそう言えばいいのに……。

なつの心は圭司に対する恨めしい気持ちが込み上げてきた。

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