婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
それから1年。
なつが圭司を見つけたのは、雑誌に掲載されたカリスマホストの特集記事の中だった。
彼は新宿にある【アクア】というホストクラブで【響】という名で働いていた。
爽やかな印象はすっかり消えて、代わりにホスト特有の男の色気を放っていた。
これでようやく圭司に会える。
なつは両親が寝静まった後、圭司のいる夜の街へとタクシーでやって来たのだ。
「いらっしゃいませ。クラブアクアへようこそ。ご指名のホストはいらっしゃいますか?」
出迎えたホストがなつに微笑みかける。
胸には【支配人】と書かれたバッチがついていた。
「こちらのお客様は、響さんをご指名だそうです」
拓哉が耳打ちした。
「かしこまりました。ですが、響には他にも沢山の指名が入っておりまして、お客様のテーブルにつけるかはお約束できません。それでも宜しいでしょうか?」
「はい。それでもいいです」
「承知しました。では、こちらへどうぞ」
支配人がそう言うと、拓哉は「じゃあね、なっちゃん」とウインクをして見送った。
なつはドキドキしながら薄暗い店内を歩く。
「こちらのテーブルです」
通されたソファー席になつは恐る恐る腰かけた。
隣のテーブルでは、派手なメイクをしたギャル風の女性客がホストの首に手を回しながら、まるで恋人のように抱きついている。
そして、反対側のテーブルではホストが数人集まって、シャンパンを一気飲みしながら騒いでいた。
初めて目にする夜の世界になつは驚きを隠せない。
「失礼します。本日はアクアへようこそ。レンといいます。しばらく、私がお相手しても宜しいですか?」
「あっ、はい」
レンと名乗ったホストはニコリと笑い、なつの隣に腰をおろした。
ワックスで遊ばせた髪はいかにもホストらしく、香水の香りをプンプン漂わせていた。
「あなたのお名前は?」
「えっと。なつ……といいます」
「なつさんかぁ。とても可愛い名前ですね。あなたにとてもお似合いだ」
「あ……りがとう…ございます」
「なつさんはこういう所は初めてですか? でも、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。とりあえず、何か飲みましょう」
そう言って、レンはボーイを呼び止めた。
「あの、響さんはとれくらいで来られるんでしょうか?」
ソワソワするなつにレンはこう言った。
「残念ですが、今夜は大切なお客様がいらしているとかで、こちらにはつけないそうです。その代わり、私がなつさんを満足させますから」