婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
駆け落ちだなんて、一瞬でも考えた自分が滑稽に思えてくる。
圭司が戻らなかったのは、私の家のことを心配したからじゃない。ゆかりさんを愛したからだ。
なつの心はゆかりへの嫉妬心でどんどん黒く染まっていった。
なつはバックから指輪を取り出し、自分の指に慌てて嵌めた。
『圭司の愛の証』
バランスを失ったなつの心を、唯一指輪だけが救ってくれるような気がしたのだ。
なつは、すっかり日の落ちた空を病院の窓からボンヤリ見つめていた。
「なつさん、ここにいたんですか。随分遅いので心配しましたよ」
しばらくして、田島がなつの元にやって来た。
「すみませんでした。ちょっと考えごとをしていて」
そんななつの言葉に田島の目つきが鋭くなった。
「あの男のことでも考えていたんですか?」
「えっ?」
「その指輪も私への当てつけですか?」
「こ、これは…」
なつは咄嗟に左手を隠した。
「知ってますよ。あなたがあの男に会いに行っていたこと。今は響とかいうホストになってるんでしょう?」
なつはゴクリと唾をのんだ。
「あなたも可哀想な人ですね。彼はあなたのことなんて忘れて、新しい恋人と幸せにやっているというのに……未練がましくこんな指輪まで嵌めて」
田島はなつの手を掴んだ。