婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「うわ~素敵!」
なつは一面に広がるパノラマの夜景に目を輝かせた。
「でしょ? なっちゃんに見せてあげたかったんだよね」
拓哉はうっとりとするなつの顔を横目で嬉しそうに見つめた。
ここは都内某所にある展望レストラン。
どの席も円形の窓に向かってペアシートになっているお洒落で贅沢な造りだった。
「じゃあ、乾杯しようか?」
「何に乾杯?」
「うーん。何だろうな」
拓哉は真剣に考え込んだ。
そんな拓哉を見て、なつは思わずクスッと笑いを漏らした。
「まあ、私にはおめでたい話題なんてないからね」
「なっちゃん……」
拓哉は困ったようになつを見た。
「ねえ、拓哉さん。この間はごめんね」
「いや、俺のことなんて気にしなくていいんだよ。なっちゃんさえ傷ついていなければ」
「うん。ありがとう」
なつは拓哉のグラスに自分のグラスをカチンと当てて、ワインを一口口に含んだ。
「うん。おいしいね。お酒は強くないけど、これなら私でも飲みやすい」
ニコリと笑うなつ。
そんななつを見て拓哉は複雑な表情を浮かべた。
「なっちゃん。俺の前では無理して笑う必要なんてないからね。何でも吐き出してよ。ね? なっちゃん」
なつは拓哉の優しい言葉になつはとうとう涙ぐんだ。
「あのね……拓哉さん。私ね……」
なつは圭司とのことを全て拓哉に話した。
「そっか…。そんなことが」
拓哉はなつの肩をそっと抱き寄せた。
「ごめん、変な意味はないから。なっちゃんが弱ってる時にただ胸を貸したいだけなんだ。なっちゃん、思い切り泣いていいよ」
なつは黙って頷き、拓哉の胸で声を押し殺しながら泣いたのだった。
「拓哉さん。今日はこんな素敵な場所に連れ出してくれてありがとね。色々と話も聞いてくれて、凄く感謝してる。私ね、圭司のことはちゃんと吹っ切るから。心変わりなら仕方のないことだしね。自分の運命を受け入れようと思う」