婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~

しばらく泣いた後、なつは涙をふきながら明るくそう口にした。

「なっちゃん。まさか例の結婚を受け入れるつもり?」

「うん。父の為にもそれが一番いいと思うから」

「それは違うよ。結婚は好きでもない相手とするべきものじゃない。いくら家の為だからってさ。ねえ、なっちゃん、俺がその結婚ぶち壊してあげるよ」

拓哉の目は本気だった。
けれど、なつは大きく首を横に振る。

「ありがとう。でもね、本当にもういいから。ちゃんと幸せになるから大丈夫」

強がりながら笑うなつを、拓哉はやりきれない思いで見つめていた。



*****

その翌朝のことだった。
リビングに鳴り響く電話の音でなつはギクリとして目を覚ました。

賢三に付き添っている母節子からの電話かもしれない。

なつは、慌てて受話器を取った。

「はい。もしもし!」

『あんた、なつさんか?』

年配の男の声だったが心あたりはない。

「えっ? あっ………はい。そうですけど。どちら様でしょうか」

男はなつの質問は答えるずに、一方的に話し始めた。

『あんたの婚約者は青龍会と繋がってる。気をつけた方がいい』

「えっ…どういうことですか?!

『あんたの婚約者はな、あんたの親父さんの金をこっそり青龍会に流してるんだよ。嘘だと思うなら自分で確かめてみるといい。今夜7時、青龍会の組長の屋敷で行われる幹部会に、あんたの婚約者は出席するばすだからな』

「あの、あなたはいったい」

『ツー ツー』

そこで電話は切れてしまった。


< 39 / 87 >

この作品をシェア

pagetop