婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
しばらく泣いた後、なつは涙をふきながら明るくそう口にした。
「なっちゃん。まさか例の結婚を受け入れるつもり?」
「うん。父の為にもそれが一番いいと思うから」
「それは違うよ。結婚は好きでもない相手とするべきものじゃない。いくら家の為だからってさ。ねえ、なっちゃん、俺がその結婚ぶち壊してあげるよ」
拓哉の目は本気だった。
けれど、なつは大きく首を横に振る。
「ありがとう。でもね、本当にもういいから。ちゃんと幸せになるから大丈夫」
強がりながら笑うなつを、拓哉はやりきれない思いで見つめていた。
*****
その翌朝のことだった。
リビングに鳴り響く電話の音でなつはギクリとして目を覚ました。
賢三に付き添っている母節子からの電話かもしれない。
なつは、慌てて受話器を取った。
「はい。もしもし!」
『あんた、なつさんか?』
年配の男の声だったが心あたりはない。
「えっ? あっ………はい。そうですけど。どちら様でしょうか」
男はなつの質問は答えるずに、一方的に話し始めた。
『あんたの婚約者は青龍会と繋がってる。気をつけた方がいい』
「えっ…どういうことですか?!
『あんたの婚約者はな、あんたの親父さんの金をこっそり青龍会に流してるんだよ。嘘だと思うなら自分で確かめてみるといい。今夜7時、青龍会の組長の屋敷で行われる幹部会に、あんたの婚約者は出席するばすだからな』
「あの、あなたはいったい」
『ツー ツー』
そこで電話は切れてしまった。