婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「そうですか。それなら、また出直します」
全く圭司に会えないのなら、ここにいたって仕方がないとなつは思った。
「そんなに私じゃ不満ですか? 一杯くらい飲んでいって下さいよ。ね?」
レンは強引になつの肩を抱きよせる。
突然、密着した体になつは驚いて押し返そうとしたが、男の力にはかなわなかった。
「あの……離して下さい」
なつが声を震わせたその時だった。
誰かがレンをなつから引き剥がした。
「俺の指名客だろ? 早くどけよ」
レンを睨みつけながら立っていたのは、No.1ホストの響だった。
「いやいや、響さん……。今日は新規の客は受けないんじゃなかったでしたっけ?」
「手が空いたんだよ。いいから、どけ」
「分かりました」
響に怒鳴られたレンは納得がいかないという風に首を傾げながら、なつのテーブルを去っていった。
「ご指名ありがとうございます。お待たせしてすみませんでした」
響は事務的な口調でそう言うと、なつの隣に腰を下ろした。
「けい………じ」
やはり彼は圭司だった。
茶髪にピアス。
胸元にはシルバーのアクセサリーがチラリと見える。
すっかり変わってしまったけれど、彼は圭司に間違いなかった。
けれど、自分を見ても全く動じない圭司になつは不安になった。
「ねえ、圭司なんでしょ?」
なつは彼の両腕をギュッと掴んだ。