婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
と、その時だった。
「なつさん!」
後ろから誰かがなつを呼び止めた。
なつが足を止めて振り返ると、私服姿のゆかりが立っていた。
「由香理さん?」
「ごめんなさい、なつさん。実は今の電話の会話聞いてしまったんです。私ならなつさんの力になれるかもしれません。青龍会の組長の家なら、私も分かりますから」
ゆかりの言葉に動揺する。
一瞬頼ってしまいそうになったけれど、彼女をこんなことに巻き込んではいけないと思った。
「いえ、そのことならもういいんです。興信所に調べてもらおうかと思っているので」
「なつさん、それは返って危険です! もし興信所に頼んだことがバレてしまったら、それこそ、なつさんの命が危ないですよ。私なら、絶対に見つからずに組長の家に忍び込めます! だから、私を信じて付いて来て下さい!」
「えっ! ちょっと由香理さん?」
ゆかりは強引になつの腕を掴み、タクシー乗り場へと歩き出した。
「いいから黙って付いて来て下さい」
ゆかりは困惑するなつをタクシーに押し込むと、手帳を見ながら運転手に組長の家の住所を告げた。
「聞いてるかもしれませんが、私の父は青龍会に借金をしてしまいました。そのせいで、私は組長の愛人にさせられそうになったんです。一度、組長の家に監禁されかけたことがあって、こっそり裏庭の塀の下に抜け穴を掘って逃げてきたんです。多分まだ塞がれていないと思うので、そこから入れば中の様子がよく見えると思うので」
由香里の説明を聞いて、なつは気が変わった。
「由香里さん。すみませが、私にその抜け穴がある場所だけ案内して頂けますか? 後は自分で何とかしますので」
「いえ、ちゃんと中までご案内しますよ。なつさんの婚約者さんの潔白がハッキリするまでいくらでも協力します」
にこりと微笑む由香里に、なつは思わず問い返していた。
「どうして、そんな危険を冒しまで私に協力してくれるんですか?」
「それは……狡いようですけど、なつさんが幸せになってもらわないと困るんです。元カノってそれくらい恐ろしい存在なんです。とにかく私に任せて下さい! 悪いようにはしませんから」
そう言って、由香里はなつの手を力強く握った。