婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
なつと由香里を乗せたタクシーは、青龍会の組長の屋敷の手前で止まった。
ゆかりはタクシー車を降りると、なつの手を引き目立たないようにして裏手に回った。
正門では黒いスーツを着た組員らしき男達が、黒塗りの外車から降りてくる幹部達を出迎えていた。
「なつさん、こっちです」
なつは由香里の後について壁伝いに歩いて行く。
屋敷の裏側は腰の高さまで草が生い茂っていた。
ゆかりはある場所まで来ると、いきなりしゃがんで塀の下に頭を潜らせた。
「あった! ここです。穴があるので私に続いてくぐって下さい。」
そこはちょうど人が通れるくらいの穴が、屋敷の中庭まで掘られていた。
二人はその穴をくぐり抜け中庭へと忍び込んだ。
なつは由香里と共に植木の影に身を隠しながら、明かりのついた屋敷の方に視線を向けた。
「なつさん、中に婚約者さんはいましたか?」
ゆかりが小声で聞いてきた。
「いえ。今のところいないようです」
時刻はちょうど7時になり幹部会が始まったところだ。
「遅れてくる場合もありますから、もう少し様子をみてましょうか」
「はい」
なつは由香里の提案に頷いた。