婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
なつは自宅の門の前で足を止めた。
「ほら、忘れもの」
圭司はそう言って、なつにハンカチを手渡した。
「えっ? いや、これ私のじゃない」
なつの言葉を無視して圭司が耳元で呟いた。
「あんな事言ってごめんな。でも、二度とこんな危ない真似はするなよ。もし何かあったら必ず俺を呼べ。ちゃんと守ってやるから。分かったな?」
それだけ言うと、圭司はハンカチををなつに握らせて、車へと戻って行った。
◇◇◇
さっきのはいったい何だったのだろう。
キツく言い過ぎたからフォローのつもりなのだろうか?
俺を呼べと言われても、なつは圭司の連絡先なんて知らない。きっと本気で言った訳じゃないのだろう。
なつはベッドに仰向けになりながら、そんなことを考えていた。
「そう言えば………」
ふと、渡されたハンカチが気になり手に取った。
花の刺繍が入った白いハンカチ。
私のじゃないのにどうして?
強引に渡してきた圭司に違和感を感じる。
「あれ?」
よく見ると、ハンカチには【N.M】とイニシャルが刺繍されていた。
「お、おば様!」
なつは思わず声を震わせた。
圭司の母親はなつによく手作りのものをなつにプレゼントしていた。そして、必ずなつのイニシャルを刺繍していたのだ。
なつは胸がいっぱいになってハンカチをギュッと握りしめた。
と、その瞬間、ハンカチの中から名紙がストンと落ちた。
「何これ?」
それは【響】と書かれた圭司の名紙だった。
そして、プライベートの携帯番号が手書きで書き加えられていた。
『何かあったら必ず俺を呼べ』
呼んだら本当に助けてくれるの?
『ちゃんと守ってやるから』
もうその言葉だけで十分だ。
その夜、なつはハンカチと名刺を握りながら眠りについたのだった。