婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「いえ。人違いではないですか? 私は響というのが本名なので」
圭司は顔色ひとつ変えず、そう答えた。
「何言ってるの。私が圭司を見間違えるはずないでしょ! ねえ、どうして私の前からいなくなったりしたの? ずっと探してたんだから!」
なつは思わず叫んでいた。
「いい加減にしてもらえますか。そろそろ戻らないといけないのでこれで失礼します。こちらでタクシーを手配しますので帰って下さい」
そう言って、圭司は席を立った。
「待って! この婚約指輪、覚えてるでしょ? 圭司はこの指輪くれた時、私に約束してくれたよね? 絶対に幸せにするからって。一生そばにいるからって。あれは全部嘘だったの?」
泣きながらなつは訴えた。
けれど、圭司はそんななつを無視して、店の奥へと戻って行った。
すぐに、支配人らしき男がなつの元にやってきた。
「お代は結構ですので、今日のところはお帰り頂けますか?」
そんな支配人の言葉になつは無言で立ち上がり、フラフラした足取りで店を出て行った。
店の階段を下りて外に出ると、拓哉が追いかけてきた。
「なっちゃん、待って。さっきの話って本当なの? ちょうど店に戻ったら聞こえちゃったからさ」
なつは足を止めて拓哉の方に振り返る。
「そうよ。彼は圭司って言って、私の婚約者だった人。でも、圭司は私のことなんて忘れちゃったみたい。追い返えされちゃった」
生気のない表情でなつはふっと笑った。
「これ、よかったらあげる。売ればお金になると思うし……いらなかったら捨てちゃて」
なつは指輪を外して、拓哉に差し出した。