婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
その時だった。
「やめろ!」
突然、低い声がして男達の手が止まった。
「あ、兄貴……」
男達は慌ててなつから離れる。
「おまえら見回りサボって何やってるんだ」
田島は鋭い目つきでチンピラ達を睨んだ。
「すみませんでした! すぐに持ち場に戻ります」
「もう終わったよ。たった今、黒澤組の連中が帰って行ったとこだ」
「そうっすか。すみませんでした!」
田島に向かって深く頭を下げる男達。
「もいいい。早く出ていけ!」
田島はチンピラ達を追い出すと、なつの方へと視線を向けた。
「さてと」
田島はゆっくりとなつの方へと歩き出した。
なつはお尻をついた体勢でズリズリと後ずさる。
「田島さん。あなたはヤクザだったんですね」
「ええ。そうですよ。私は青龍会の組長の息子なんですよ」
なつは絶句する。
「えっ?組長の息子………で、でも、亡くなられたあなたのお父様は父の昔からの友人だったはず」
「あの人は本当の父親ではありませんよ。組長の元愛人だった母と再婚しただけですからね。義父の死後、母からそのことを告げられた私は、青龍会のNo.2としてヤクザの世界に入ったんです。表向きは代議士の秘書として先生に仕え、裏ではこっそり青龍会にお金を流していたんです」
「そんな……」
田島の告白になつは愕然とする。
「それでも……あなたのことは結構本気だったんですがね。あなたはあの男の夢中で私のことなんてちっとも見てくれませんでしたよね」