婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「なつ。そろそろ起きて」
圭司の声で目を覚ましたなつは、勢いよくベッドから飛び起きた。
「あれ? 圭司がいる」
寝ぼけるなつに圭司は耳もとで言った。
「昨日あんなに愛し合ったのに、もう忘れちゃった?」
圭司はなつの唇に軽くキスを落としてクスクスと笑う。
「朝食できてるよ。おいで」
「あ、うん。ありがとう」
なつは頷いてベッドを降りた。
テーブルの上には二人分の雑炊が用意されていた。
「昨日の鍋の残りにチーズとトマト缶を足して、リゾットぽっくアレンジしてみたんだけど」
「うわ~いただきます!」
なつは両手を合わせてから、パクリと口に入れた。
「うん。おいしい! 圭司って料理上手なんだね」
感動するなつに圭司は照れながら笑った。
「別にこんなの料理のうちに入らないけどな」
「でもおいしいよ、これ! 世界一おいしい。どうしてこんなにおいしいのかな~?」
「ああ。なつが俺を愛してるからだろ?」
圭司は昨夜の拓哉の言葉を真似てそう言った。
「アハハ。今頃、拓哉さんくしゃみしてるね」
二人は顔を見合わせながら笑った。
「あ、そうだ。拓哉さんで思い出したけど」
「ん?」
「いや、あのね。圭司ってまだホストを続けるんだよね?」
昨夜拓哉が言っていたのだ。
『響さんがいなくて今お店大変なんですから。早く復帰してくださいね』
それを聞いてから、なつの心中は複雑だった。
「まさか。続ける訳ないだろ? ちゃんと就職先決まったし」
「えっ? そうなの!?」
なつはスプーンを置いて顔を上げた。
「実はさ。一年前に内定をもらってた会社の人事部長と入院中電話でコンタクトをとってて。中途で入社できることになった」
「えっ、凄い! 圭司が内定もらってたところって、確か王手のスポーツメーカーだったよね!?」
「まあな……ホストやめても、なつ一人くらい養っていけそうだろ?」
圭司はクスリと笑った。
「だから、近いうちになつのご両親に合わせて。一日も早くなつと家族になりたいから。早く俺の奥さんになって」
なつの顔がぱあっと明るく輝いた。
「うん。でももう絶対に消えたりしないでね」
「ああ。大丈夫。今度こそなつを幸せにするから」
圭司の二度目のプロポーズ。
ふたりの未来の扉が、大きく開かれた瞬間だった。
〔完〕