婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
そして、一時間後。
拓哉の言うとおり、圭司は奥のVIPルームから女性客と共に出てきた。
「よし、なっちゃん。あの二人が店を出て少ししたら追いかけな」
拓哉がなつに耳打ちする。
なつは大きく深呼吸したあと、テーブルに置かれたカクテルを一気に飲み干した。
「じゃあ、行ってくる」
ソファーから立ち上がったなつ。
けれど、足がフラついて拓哉の膝の上に腰かけてしまった。
「あれ?」
「なっちゃん、大丈夫? もしかして酔っぱらっちゃった?」
拓哉はなつの顔を覗き込んだ。
「そ、そうかも……。どうしよう」
「なっちゃん、ちょっと作戦変更しよう。響さんに会ったらこうやって抱きついちゃいな。それでちゃんと理由言うまで離さないって絡んでみなよ」
「そんなことしたら圭司が困るよ。仕事の邪魔しちゃう」
「いいんだよ。困まらせるのが作戦なんだから。っていうか、なっちゃんってホントお人好しなんだね。自分を裏切った恋人の心配なんかしてさ。とにかく、響さんには別れの理由を説明する義務があるんだから、遠慮なくいきなよ」
「う、うん。分かった」
なつは拓哉の提案を受け入れて、先に店を出て行った圭司達を追いかけた。
フラつく足どりで慎重に階段を降りていくなつ。
先ほどよりも随分酔いが回っていた。
ふと前を見た瞬間、なつは息を呑んだ。
圭司が階段の下で女性客とキスをしていたからだ。
「え! キャア~~!!」
気が動転したなつは、階段を踏み外してしまった。
悲鳴と共になつの体は宙を舞った。
「なつ!!!!」
落ちて来たなつを、自ら下敷きになって受け止めたのは圭司だった。