【短編集】秘密
「いいよー」

目の前でイチャイチャしだしたら、速攻帰ってやろう。

そんなことを思って苦笑いしていると、百合花がトイレから戻ってきた。

「千春…?」

「え?」

心配そうに覗き込む百合花に首を傾げる。

「どうか、したの?」

「どうもしないよ?」

本当に。

小さく笑ってみせると、百合花はまたふんわりと微笑んでくれた。

うん。


何でもないはずだ。

何故だか胸がチクリと痛んだことは、気のせいだったのかもしれない。
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