【短編集】秘密
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「あれ?千春ちゃんも来たの?」

校門前で洋と待ち合わせ、ということだったので校門に行くと、洋は既に迎えに来てくれていた。

能天気な声。

「来ちゃ悪いわけ」

思わずつっけんどんに返事をしてしまう。

「いや?来ないだろうなと思ってただけ」

あんたの彼女が私を呼んだんだよ!と言ってやりたいけど、ここは旧友の顔を立てて言わないことにする。

夏奈子は曖昧な表情だし。

「あ!千春!フランクフルトあるよ!」

耐えかねたのか夏奈子が一角を指差す。

フランクフルトか。

昔、縁日で食べたきり全く縁のなかった食べ物だ。

第一脂っこいものや肉肉したものがあまり好きではない。

「あー、夏奈子?千春ちゃん脂っこいの苦手だし」

洋が眉を下げている。

「え?そうなの?」

「えっと、普段はね。でもまぁ──」

《1-A激ウマフランクフルト!》

屋台に書かれた文字に目が行った。

フランクフルトを学祭の模擬店でどうやったら不味くできるのか、知りたいところだけど。

今日くらい食べてみようかな。

「いいよ、売り上げ貢献してあげる」

洋の目に驚きの光が宿るのを余裕の表情で眺める。

「そりゃ、助かるけど」

微妙に腑に落ちない、とでも言いたそうに洋が店へと向かう。



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