【短編集】秘密
フランクフルトを洋が買ってきて、私に手渡してくれた。

「ん、ありがとう。はいお金」

「有り難く頂戴致します」

450円ピッタリだ。 

「あのさ」

ん?と洋が振り向く。髪がサラリと揺れた。

「ケチャップとマスタードはどこにあんの?」

フランクフルトには必須でしょう。

「プラス100円」

「はぁ!?」

声をあげたのは夏奈子だ。 

私も黙っていられない。

「あんたそれさすがにぼったくりでしょ!なんつー価格よ舐めてんの!?」

「い、いやぁ」

タジタジと後退する憐れな子羊、洋。

端から見ればそんな構図だ。

「客ほしいの!?欲しくないの!?」

「欲しいけどさ、これぐらいとんないと行けないんだよなぁ」

「どこによ」

「焼き肉」

商売を馬鹿にしてるよこいつら。

いっそ破産しないかな。

「分かった!分かったから!水風船買ってやるから!」

いらねーわよ、と言おうとしたのに、

「ほんとっ!?」

えらく夏奈子が喜んでいる。








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