【短編集】秘密
誰かに心配して欲しかったんだ。


いつも、いつだって自分に自信なんか無くて。


嘘をついて病気のフリをしたり、眼帯を着けてみたり顔に大きな絆創膏を貼ってみたり。


苦しかった。


「…ドクターストップが、かかりました」


こんな嘘も、何度となく重ねてきた。


桜木先輩が目を見開く。

サッカーで鍛えられた身体。


「あゆ。本当なのか…?」

「はい。だから…今年の体育祭が最後に、なります」

マネージャーなんて辛いだけの仕事だった。

加えて私は力仕事を先輩に押し付けられる毎日で。

やりがいなんか無い。

あるといえば、桜木先輩と話すことだけ。


心配されていれば愛されてるって分かる。

私は必要なんだって実感できる。


私は嘘つきだ。


嘘つきの何が悪い?

苦しい。愛して欲しい。


本当に病気になりたいと思っていたのに、私は至って健康だ。


世の中不公平じゃないか。


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