【短編集】秘密
病気になりたくなかった人が、病気になって。

心配されて、でも心配させたくないなんて気丈に振る舞って。


そんなこと私にはできない。


私からすれば、そんな心配させたくないだなんて贅沢な感情だ。


心配されると分かっている人はそう思うだろう。

心配されるかどうかも分からない。

私が嫌われていたら、心配なんかされないだろう。


心配してくれたなら、口先だけの偽善的な言葉であっても安心できる。


「あゆ……」

「今年とか言いましたけど…明日、なんですね」


桜木先輩の瞳が揺れる。

悲しい顔とうらはらに心は高揚する。

先輩に、愛されてるんだ。
良かった。

「お願いが、あるんです」

「退部しても差し入れのお菓子とか…マスコットだけでも作らせて下さい」


「良いに決まってんだろうが!」


ぎゅ、と抱き締められて息が詰まった。
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