【短編集】秘密
「え、百合花!彼氏と別れたの!?」


カフェの席で佐久間 千春が叫んだ。

…恥ずかしい。


「うーん。別れちゃった」

「何でっ!?」

「叶夢くん、あゆのこと好きになっちゃったみたいで」


桜木 叶夢は私の彼氏。

否、もう元彼か。

そしてあゆは部活仲間だ。


「よりによって、あゆ!?」

「千春ー。あゆだっていい子なんだよー?」

「そうは言ってもさ!ほら…なんかあの子、胡散臭いし」

「胡散臭い?」

「怪我やら病気やら…多くない?」

「そうかなぁ?」


私が首を傾げると、千春は盛大に溜め息をつく。


「あんたは疑うことを知らないわけ」

「あゆを、疑う?」


あゆ。

いつも笑顔で優しくて。

あんなに相手に気を遣って話す人、きっとこの世にあゆ位だろう。
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