【短編集】秘密
あゆから出る声は優しい音色を象って、一つの曲を造るような気さえ覚える。


「まーでも…あゆって本当に気許してんの百合花くらいでしょ?取り上げちゃカワイソーだしなぁ」


唸る千春を呆然と眺めるだけで言葉の意味はサッパリ分からない。


「取り上げる?」

「あー、もう!百合花お人好し!」

「は?」

「あんた悔しくないの!?」

「悔しいというか…悲しい、かな」


叶夢くんは私の全てだった。

マネージャーだからって理不尽に受ける嫌がらせも叶夢くんの傍にいるためなら耐えられた。


それなのに。


叶夢くんが私から居なくなった今、何が残る?


だから辞めたと言っても嘘ではない。


叶夢くんの居ない部活など。



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