太陽に恋をして
「…ふ」


まさか。
そんなはずない。


思わず足が止まる。

楓佳のことを考えすぎて、とうとう幻覚が見えてしまったのかもしれない。



太陽の塔の前に、楓佳にそっくりな女の子がぽつん、と所在なげに立っていた。

そんなわけない。
楓佳がこんなところにいるはずない。


気がつけば、指の先が震えていた。


俺は手のひらをぐっと握って、しっかりしろと自分に言い聞かせる。


楓佳じゃない。
楓佳がいるはずない。


一歩、また一歩とゆっくり芝生の上を歩いた。


女の子が顔を上げた。



「…ふぅちゃん」」

それは紛れもなく楓佳だった。

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