太陽に恋をして
「ゆづ…」


楓佳は泣きそうな顔をして、俺の顔を見るとすぐ顔を伏せた。


「なんで…」


「美月ちゃんに頼んだの。普通に会いに行ったら会ってくれないかもしれないから…」


「会ってくれないって…」


「だって私、ひどいこと言ったし」



――ゆづなんて大阪でも南極でも、どこでも行っちゃえ!!――

そんなこと、もうどうだっていいのに。

手の震えが止まらなかった。
よく見たら、楓佳も細かく震えていた。


「座ろう」


太陽の塔の前の芝生の上に、俺たちは並んで座った。

どこまでも遮るものがない青空なのに、楓佳はシャクシャクと芝生をむしりながら、ずっと下を向いている。


黄色い帽子をかぶった幼稚園児たちが、二人一組で列になり、先生のあとを着いていく。




手を伸ばせば触れる距離に楓佳はいた。

ただ、それだけで、泣きたくなるほど幸福だった。




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