太陽に恋をして
「ふうちゃん、加奈さんの旦那さんが酔いつぶれたのってこの酒じゃないの?」

二杯目のカイピリーニャを飲みながら、俺が聞くと、楓佳はほんのり頬をピンクに染めて、そうかなと首を傾げる。


「これ、甘いけど、たぶんアルコール度数やばいやつ。1、2時間後に急にきいてくるやつだと思う」

楓佳はあまりアルコールに強くない。
それを自分で自覚してないからたちが悪い。
自分ではしっかりしてるつもりなんだろうけど。



「そろそろ帰ろ。ふうちゃん、明日も仕事だろ?」


「休み」


「え?」


「加奈さんが、シュラスコ食べに行くって言ったらシフト変わってくれた」



焼きパイナップルをフォークで突き刺して、楓佳はふにゃふにゃと笑う。


「ゆづも休みでしょ?だから、もう一杯飲もう」


そう言って、スタッフを探す楓佳の目はもうすでに泳いでいる。




「…ふうちゃん、俺眠い」


俺がそう言うと楓佳は、ん?と首を傾げて俺を見た。


「寝そー」


「ゆづっ、寝ちゃだめ」


楓佳は一瞬、酔いが覚めた様子で俺の肩をわしわしとゆすった。


「ゆづー、起きてー」


「帰ろ」


「わかった、わかった。帰ろ、ね?」


俺が伝票を持って立ち上がると、楓佳も立ち上がったけど、その足元は少しふらふらとしている。

心配そうに俺を見上げる楓佳を見ながら、どっちが危ないんだよ、と内心思う。

さっきから、隣のサラリーマン達がチラチラと楓佳のこと見てるってこと。
きっと楓佳は一生気づかないんだろうな。
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