太陽に恋をして
唯月はコーヒーを飲んだあと、一度自分のうちに帰って行った。

部屋の掃除をしながら、私は干物女かもしれない、なんて思う。

仕事がお休みだというのに、予定がひとつもないなんて。

百貨店は休みが平日だから、短大時代の友だちとも遊びにくいし、子ども服売場で働いているせいか、出会いもない。

結局、休みの日はこうして掃除をしたり、一人でDVDを見たり、たまにこうして唯月と休みがあうと二人で出掛けることもあるけど。

唯月も平日が休みだから、映画なんかは唯月と行ってばかりだ。


洗面所を掃除していると、見慣れない水色の歯ブラシが増えていることに気づく。

「さてはゆづか…」

手に取って見ると、柄の部分に油性マジックで「ゆづくん」と書かれていた。
ママの字だ。


「まさかのママ…」


ママが嬉しそうに歯ブラシを唯月に渡す様子が目に浮かぶ。

うちは女の子しかいないから、息子みたいでかわいくて仕方ないのだろう。
唯月がママの息子だとしたら、唯月は私のお兄ちゃんじゃなくて弟だけど。

絶対に。


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