太陽に恋をして
ケーキを七つと、本屋さんであゆあゆにプレゼントする絵本を二人で選び、唯月のうちに帰ると、リビングからパタパタとかわいらしい音をさせながら、あゆあゆが走ってきた。


「ふーかちゃんっ」

腕を広げてあゆあゆを抱き止めると、小さい子独特の甘い香りが鼻をくすぐる。

「あゆあゆ、何歳になった?」


抱っこして聞くと、あゆあゆは得意気にぷにぷにの短い指を2本立てて見せる。


「わ、あゆあゆ、ピース出来るようになったんだ!?」


こないだまで出来なかったのに。
私が感動していると、

「楓佳ちゃん、久しぶり」


唯月に雰囲気が似ている美人な美月ちゃんがにこにこしながら立っている。


「先週、出来るようになったの。ピース。ね?」


そう言ってあゆあゆに笑いかける。


「美月たちに会うのは三ヶ月ぶりくらい?」


唯月のお母さんが、スリッパを出してくれながら聞く。


「それくらいかな?」


振り向いて唯月に確認すると、唯月はそうかな、と言いながらスニーカーを脱いだ。


「これ、ふうちゃんから。ケーキ」


唯月がさっき二人で買ったケーキの箱を唯月のお母さんに渡すと、


「ケーキ!」


あゆあゆが嬉しそうに跳び跳ねる。


「楓佳ちゃん、ありがとうね。入って入って」


ベージュのカフェエプロンをつけた唯月のお母さんは、ケーキの箱を大事そうに両手で抱えて、にっこりと笑った。



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