太陽に恋をして
あゆあゆはリビングのカーペットの上で、あぐらをかいだ唯月の膝にすっぽり入り、私と唯月が選んだ仕掛け絵本に夢中だ。


私と美月ちゃんとお母さんはそれをキッチンから見ながら、お昼ご飯を作る。

唯月のお母さんは料理が上手で、私はママよりも唯月のお母さんに料理を習うことの方が多い。


「ゆづきー、もっかい」


気に入ったページがあったらしく、あゆあゆはさっきからそこばかりリクエストしている。


「あーあー、あれエンドレスで読まされるパターンだわ」


美月ちゃんはおかしそうに笑ってそう言った。


「トントントン…誰かな?…わぁ!おおかみだー」


何度も読んでいるのに、そのページを読んでもらうと、あゆあゆはまるで音に反応して笑うおもちゃのように笑い転げる。


挽き肉と玉ねぎを炒め、そこに刻んだトマトを入れる時になって、


「あっ!!ローリエがないっ」


ダイニングボードをのぞきこんでいたお母さんが悲痛な声をあげた。


「唯月、ちょっとローリエ買ってきてよ」


お母さんは大声でリビングにいる唯月に声をかける。


「ローリエ?なにそれ?」


「月桂樹の葉っぱよ。あれがないとミートソースが作れない。早く行ってきて」


「葉っぱ?どこに売ってんの?」


私はお鍋をかき混ぜていた手を止めた。
ローリエなんて、唯月はきっと見たこともないし、どこに置いてあるかわからないだろう。


「お母さん、私行ってくるよ」


火をとめて、私が言うと、


「じゃ、俺ふうちゃんと二人で行ってくる」


唯月はあゆあゆを膝から下ろして立ち上がる。


「いいよ。唯月はあゆあゆと遊んでて」


「あゆむもいくー」


あゆあゆが、嬉しそうに言いながら、私と唯月の手を握った。


「じゃあ、三人で行ってきてくれる?楓佳ちゃん、二人がいらないもの買わないように見張っててね」


お母さんと美月ちゃんに見送られて、私と唯月、それにあゆあゆは外へ出た。




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