太陽に恋をして

〜side 唯月〜

俺のベッドで昼寝をしている歩睦の足は、まるで蛙の足みたいに菱形だ。


「赤ちゃんみたい。何歳くらいまでこんな格好して寝るのかな」


楓佳はそう言って優しい瞳で歩睦を見つめる。


昼ごはんを食べたあと、歩睦はゼンマイが切れたブリキのおもちゃのように寝てしまった。

美月は地元の友だちと会う、と言って出掛け、母さんも夕飯の買い物に行ったようだ。


「ゆづ、55巻取って」


ラグの上で三角座りをして、ベッドにもたれるようにしながら漫画を読んでいた楓佳が、読み終えた本を閉じて俺に渡す。


ベッド脇の本棚からそれを抜き取り、はいよと渡すと楓佳はありがと、と小さい声で応え、また漫画に目を落とした。


楓佳が読んでるのは、俺が集めている少年漫画で、楓佳は俺の部屋に来るたびに少しずつ読んでいた。
主人公の少年が仲間を集めながら、世界の果てにあるというお宝を探す冒険物語。



「これ、今何巻まで出てるんだっけ?」

漫画から少し顔を上げて楓佳が聞く。


「78巻」


「まだ連載続いているんだよね」


「うん」



楓佳はふぅ、とため息をついて


「それじゃあ読んでも読んでも終わらないね」


とぼやく。



それもいいじゃないか、と俺は思う。


ずっとこの冒険が続けばいい。
楓佳が読んでも読んでも、終わらないくらい永遠に続けばいい。

楓佳はいつまでたっても終わらない冒険の結末を読むために俺の部屋にこうして来て。

そしてこのままなんとなく年をとって、なんとなくずっと俺のそばにいてくれたらいいのに。


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