太陽に恋をして
「俺、今三階のGute Wareで働いてんの。矢野さんのその制服、petite lapin？」

はい、と答えながら、どうやって逃げようかとそのことばかり考える。


こういう軽そうな人は苦手だ。


「俺、友だちの出産祝いとかいっつもそこで買ってたのに会わなかったね。いつもお腹の大きい人が対応してくれてたよ」


赤ちゃんもう生まれた？と柳原さんは聞く。


「まだです。来月から産休で」

そっかぁと柳原さんはにこにこ笑って、

「あ、ごめん。時間大丈夫？」


シルバーのごつい腕時計を見て慌てたように言った。


「そろそろ戻ります」


会釈して社員用エレベーターに向かうとすると、柳原さんがまたねと手を振る。


またね、か。


いつから働いているのか知らないけど、今まで会わなかったんだもん。
きっとまたしばらく会うことはないだろう。


そう思いながら、加奈さんの待つpetite lapinに戻った。
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