太陽に恋をして
「そりゃデートだねぇ」


お客さまがいない時間に子ども服を畳み直しながら、加奈さんが言う。
来週末から冬物のセールが始まるこの頃は、お客さまが少ない。


「じゃあ私にとってはこれが初デートってわけですね」


「初デート?」


加奈さんは腰に手を当てて体を起こしながら、あきれたように笑って言う。


「いっつもしてるじゃないの、ゆづくんと」


「あれはデートじゃないですよ」


信じられない。
あれがデートだなんて。



「じゃあなに?」


「あれは…お出掛けですよ、お出掛け」

加奈さんはお腹をさすりながらくすくすと笑う。


「私は年頃の男女が二人でお出掛けすることを、デートだと思ってたけど?」


「ゆづは年頃じゃないし、男でもないので」


「年頃だし男だよ」


加奈さんは、器用に片方の眉だけ上げて、私を横目で見た。

「ゆづくんは知ってるの?」


「言ってません」


だって、唯月のことだ。
絶対に俺も一緒に行きたい、とか言うもの。
駄目だといえば、イヤイヤ期の頃のあゆあゆみたいに、いやだいやだとごねて大変なことになりそうだし。
だからと言って、連れていくのもどうかと思う。
だって、これは私の初デートだから。




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