太陽に恋をして
「ゆづ、どこに行ってたのよ!」
二人で出掛ける時、方向音痴の楓佳をわざと軽く迷子にして、そのあとで楓佳の手を握る。
こうでもしないと楓佳と手を繋げないから。
「これで大丈夫」
繋いだ手を大きく振って俺が言うと、楓佳はなにを言ってるんだと眉を上げる。
「なにが大丈夫よ。はぐれたらゆづが迷子になるんだからね」
「わかったわかった」
ホントにわかってる?と言いながら、楓佳の温かな細い手が俺の手をぎゅっと握り返す瞬間が俺は好きだ。
「ん?」
ダッフルコートの裾が引っ張られる感じがして、見下ろすと西澤さんがコートを握っていた。
「西澤さんも方向音痴なんだ」
きっと、方向音痴の人にとっては迷子になることがものすごい恐怖なんだろう。
再び、人混みを歩きながらそう言うと、後ろで西澤さんが小さくうん、と頷いた。