太陽に恋をして
「唯月くん?」


petite lapinのロゴがついた水色の紙袋を手にした西澤さんが、不思議そうに俺を見上げる。


「どうかした?」



「…なんでも」



なんでもないんだろうか。
楓佳にとっては。
俺が誰といようと。


「ごめん、なんか…結構きついかも」


「え?大丈夫?」



いつの間にか、エレベーターの前まで来ていた。
どうやってここまで歩いて来たのか、わからない。


「結構つらい」


思っていた以上に。

「ごめん。俺帰るわ」


え?ちょっと待って!と後ろで声がしたけど、俺はエレベーターに飛び乗って閉まるのボタンを連打する。

するすると閉まるドアの隙間から、なんとも言えない表情の西澤さんが見えた時、俺って最低だな、と思った。

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