太陽に恋をして
◎ブルーの名刺
社員食堂の窓から青い空を眺めながら、醤油ラーメンが冷めるのを待っていると、透明のバッグに入れた携帯が振動した。


「はい」

『あ、もしもし楓佳ちゃん?』

「加奈さん!お腹大丈夫ですか?」

『うん、昨日の夜から痛くって今朝病院行ってきたんだけど、お腹張ってただけみたい。助産師さんに陣痛はこんなもんじゃない、って叱られちゃった』


受話器越しに、加奈さんの明るい笑い声が聞こえて、思わず息を吐いた。


『ごめんね、心配かけて』

「もう生まれちゃったかと思いました」

『まだまだ出てこないみたいよ。明日は行けるから。今日は急にシフト変わってもらっちゃってごめんね。変わったことなかった?』


一瞬、答えにつまった。
だけど、加奈さんが聞いてるのは、店のことだと思い直し、

「なにも。大丈夫です」


『そっか。じゃあまた明日。お疲れ様』

電話をバッグにしまい、窓の外に意識を戻す。
冬の高空を飛ぶ飛行機が、小さいながらもはっきり見える。



「ここ、空いてる?」

カタン、と醤油ラーメンの載ったトレイが置かれ、見上げると柳原さんが立っていた。


「どうぞ」


律儀な人だ。
どう見たって空いてるのに。


「醤油ラーメン、うまいよね」


柳原さんは笑いながら椅子に座り、ラーメンを食べようとして、

「食べないの?」


横目でちらりと私をみる。


「食べてます」


「なんかあった?」


思わず、柳原さんをみつめる。


「いや・・・なんかぼーっとしてたから」

柳原さんは明るい茶色の瞳で私の顔をのぞきこんだ。

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