太陽に恋をして
冷めたラーメンをすすりながら、心の中で、唯月のやつ…と呟く。


「ラーメン、のびてなかった?」


食べ終えてお箸を置くと、資料にボールペンで書き込みをしていた柳原さんが顔を上げた。


「大丈夫です」


「なると、嫌いなの?」

私のラーメン鉢のスープに浮かんだなるとを見て、柳原さんは少し笑う。


いつもなら、嫌いなものは最初に唯月に食べてもらうのに、今日は唯月がいないからこうして残してしまったことにすら、なんだかイライラする。

唯月のやつ…。



「こないだの話なんだけど…」


「こないだ?」


なるとから目を逸らして隣を見ると、柳原さんは名刺を一枚取り出して、私の目の前にすっと滑らすように差し出した。


「それ、プライベート用の名刺」


「テキストの切れ端じゃないんですね」


アドレスや電話番号が書かれた薄いブルーの名刺を見ながら私が言うと、柳原さんは、


「あの頃は俺も大学生だったからね」


と笑う。



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