太陽に恋をして
私は164センチと女性にしては背が高い方だけれど、それでも柳原さんと並ぶと20センチくらいの差がある。


「身長、何センチあるんですか?」


鴨独特の風味と歯応えを楽しみながら、向かいに座る柳原さんに質問をする。


柳原さんが連れてきてくれたのは、駅から少し離れた閑静な住宅街にある、一見普通のおうちみたいに見える一軒家のレストランだった。

白い外壁を蔦が覆い、深緑のドアには開閉するとチリンとかわいらしい音のする鈴がついている。


「185センチあるよ」

柳原さんは深いボルドーのワインを飲みながら、教えてくれた。


「高いですね」


「うちの家系、みんな高いから」


アンティークのテーブルには白いクロスがかかっていて、真ん中にはキャンドルの火が揺れていた。


「柳原さんって…ハーフですか?」


聞いた後で、もしかしたら失礼な質問かもしれない、と思う。


「ううん、クォーター。じいさまがフィンランドの人」


「フィンランドって…ムーミンの?」


「そうそう。あとサンタクロースの国。俺は行ったことないんだけどね。すごい寒い国だし、それに遠いから」


俺寒いのは苦手だしさ、と柳原さんは言って笑う。

私も寒いのは嫌いだけど、ムーミンやサンタクロースの国なら一度行ってみたいな、なんて思う。

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