太陽に恋をして
「柳原さんはどうして?」


柳原さんは今日もコートの下にGute Wareのシャツを着ていた。

ただの白いシャツなのに、この人が着るとまるで写真集の中の1ページみたい。


「俺?俺は最初ここのモデルにスカウトされたんだけど、モデルになるよりも売る方が楽しそうだったから」


「モ、モデル?」


結構すごいことを、柳原さんはなんでもないことみたいに話して、さらに続ける。


「俺は接客すごく好きだから、モデルにならなくてよかったと思う」


「どういう時が楽しいんですか?」


何の気なしに、私は聞いてみる。


「そうだな。彼女の家に結婚の挨拶をしに行くから服を選んでくれって言われたり、初デートに着ていく服の相談されたりする時かな。なんか人生の大事な日に関わらせてもらった気がして。たかが服だけど、人って着る服で気合い入ったりテンション上がったりするでしょ」


柳原さんはそう言うと、少し恥ずかしそうに笑って、そのあとでワインを飲み干した。


「そういうの、少しわかります」


petite lapinも出産祝いだとか、入学式や七五三のお参りなんかに選ばれることがあるから。

大きくなっても記憶に残る大切な日に、petite lapinの服を着てもらえると思うととてもうれしい。

柳原さんは私の言葉を聞くと、にっこり笑った。
キャンドルの灯りが揺れて、柳原さんのきれいな薄茶色の瞳も揺れた。


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