太陽に恋をして
「ふーかちゃんに電話してよ」


すぐ横で歩睦がすねた声を出す。


「いやだよ」


「なんでー」



「風呂に入って寝ろよ」


「いやだー、ふーかちゃんに絵を渡すまで起きてる」


眠くなると恐ろしく機嫌が悪くなる歩睦は、とうとうべそをかきだした。


「ふーかちゃんまだー?」


「…仕方ないな。一階に下りてみるか?」


歩睦は目に涙をいっぱいためておおきくうなづく。


「10分だけな。10分たって帰ってこなかったら、風呂入るぞ?」


はーい、と返事しながら、歩睦はベッドから飛び降りると、あっという間にコートとニット帽をかぶって戻ってきた。
手にはクレヨンで書いた楓佳の顔らしき絵を持っている。



「あたしも行くわ」

美月がマフラーを巻きながら、困ったように笑って歩睦のあとからついてきた。


「楓佳ちゃんに電話すればいいのに。なんかあったの?」


ムートンブーツに足を入れながら、美月が小さい声で聞く。

「…別に」


スニーカーのかかとを踏んだまま、跳ねるようにエレベーターに向かう歩睦のあとを追った。


楓佳に会えるだろうか。
会ったら、楓佳はどんな顔をするのだろう。

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