太陽に恋をして

〜side 唯月〜

閉店後、楓佳に会える。

それだけで、職場に向かう足が早くなっている自分に気づいて苦笑する。

まだ二人ともオムツをはいてたころから一緒にいるのだから、もう22年の付き合いだというのに。



開店前の店頭で、外壁の『hair BLISS』と書かれた細い金色の文字盤を鼻唄混じりに磨いていたら、後ろから肩を叩かれた。


「あ、店長おはようございます」

「お疲れさん。お前ごきげんだな」


にやにやしながらすぐ後ろに立っていたのは、この店の店長である桐谷さんだった。


「もうすぐミーティング始まるぞー」


「店長!」


肩を回しながら、店に入っていく後ろ姿に声をかける。
確か、40歳手前なはずだけど、その後ろ姿は若々しくていつもエネルギーに満ち溢れている。
俺が一番尊敬してるスタイリスト。


「今日のレッスン、カットモデルが来ますんで、よろしくお願いします」

「カットだけ?カラーは?」

「カラーも…いいですか?」

「いいよ。楓佳ちゃんがよければ」


そう言って、店長は店内に入っていった。

楓佳だなんて一言も言ってないのに…。
まぁ当たってるんだけど。

思わずにやけた口元を手の甲で隠しながら、店長のあとに続いた。


あとで楓佳にメールしよう。


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