太陽に恋をして
相変わらずどんくさい、か。


ラグにあぐらをかいで、ビールのプルトップに指をかけた。


美月には何もかもがバレていたのか。
と言うか、楓佳が気付かないことの方がおかしいのかもしれない。


パソコンデスクの上には、短大の時に楓佳が作ってくれた、写真を台紙に貼ったペーパークラフトが置いてある。
スクラップブッキングと言って、写真の他にイラストやシールを貼ったり、コメントが書き込んであった。


20歳の俺の誕生日にプレゼントしてくれたもので、赤ん坊のころからの二人で写っている写真がたくさん貼ってあった。

小学生のころは、俺の方が背が低くて密かに悩んでたっけ。

中学に入ると、一緒にいると冷やかされるから少し離れて歩いてよ、なんて言われて。

高校に入る頃には、周りが勝手に公認してくれて、楓佳を狙うやつが減って安心した。

大学進学も一緒に、と思っていたら、楓佳が女子短大に進むなんて言うから、真剣に悩んだりして。



俺の22年間には、常に楓佳が隣にいた。
楓佳と過ごした一日一日が俺にとってはバカみたいにしあわせな日々だった。


このまま、当たり前みたいに楓佳の隣にいて、気がつけば二人とも同じように年をとっていて、そのままなんとなく一緒にいられると思っていた。

そして、なんとなく楓佳もそう思ってくれてるんじゃないか、なんて思っていた俺が甘かったのかもしれない。


「あー、ちくしょー」


ビールを一気に飲んで、缶を片手で握りつぶした。


どうすりゃいいんだよ。
今さら。



楓佳がいなくなるかもしれない。

それは『明日から太陽は昇りませんよ』と言われるのと同じだ。

俺にとっては。



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